2010年11月04日

慰謝料@ 〜婚姻の破綻と慰謝料〜

こんにちは。
内田法律事務所の久保田といいます。
このブログでは,離婚でよく問題となる点や個人的な疑問点,雑感などを書き記していこうと思います。
どうか宜しくお願いします。

1 離婚事件において,必ずといって良いほど問題になるのが「慰謝料」の問題です。
  「慰謝料」は,人の精神的苦痛を評価して金銭に置き換えるものです。ですから,被った精神的苦痛の度合いに応じて,その金額が増えたり減ったりすることになります。

  例えば次のような場合,妻は,夫と離婚する際に,慰謝料を支払ってもらうことはできるでしょうか。

  『 私は,現在の夫と結婚して20年になります。先月,ある日突然に,夫から勤務先の部下と不倫関係にあるから,私と離婚したいなどと言われました。余りに一方的な申し出に,私は強いショックを受け,1月ほど寝込んでしまいました。』

  この夫婦の結婚生活は,夫の不倫という一方的な行動により,破綻してしまいました。ですから,妻は,離婚する際に,夫に対して慰謝料を請求することができます。

2 この結論は当然のようですが,なぜ,この場合に慰謝料を請求することができるのでしょうか?もう少し考えてみようと思います。
  会社の同僚や友人からの心無い一言で,大きく心が傷つくことは良く経験しますが,このような場合に「慰謝料」という話題が大きく取り上げられることは少ないでしょう。
  では,なぜ離婚の際には,必ず「慰謝料」が問題となるのでしょうか。
  それは,相手方の加害行為により「婚姻関係が破綻させられた」からなのです。

  先の説例でいうと,
  @夫の不倫行為 → A夫婦間の婚姻関係の破綻 → B妻の精神的苦痛
 という関係が認められることにより,損害賠償を請求することができることになります。
  つまり,損害賠償を請求できるためには,@夫の不倫行為という加害行為のみならず,A婚姻関係という法的保護に値する利益が侵害されたことが必要になります(権利侵害の要件とか違法性の要件とか言われています。)。

  離婚問題を考える際には,このA婚姻関係の破綻という要件が,大きな問題となります。

3 さて,これを踏まえて,今度は,夫の言い分を聞いてみたいと思います。

  『 私が会社の部下と不倫をしたのは事実ですが,その不倫関係に入る前には,私達の関係は既に終わっていました。私たち夫婦は,結婚して1年もすると,男女の関係はなくなり,会話も全くないようになりました。妻は専業主婦であるにもかかわらず掃除や洗濯といった家事は一切やりません。私は,10年くらい前から,単身赴任のため妻とは事実上別居状態になっていました。』

  ずいぶんと話が変わってきました。
  もし,夫の言うとおり,夫の不倫以前から,既に婚姻関係が破綻していたならば,妻は夫に慰謝料を請求することはできません。
  なぜなら,不倫の以前から婚姻関係が破綻していたというのですから,
「@夫の不倫行為 → A夫婦間の婚姻関係の破綻」という関係が成り立たないからです。

4 今日扱った話題は「婚姻関係の破綻」に関するものでした。
  不貞による慰謝料を請求するケースでは,不倫をした方からこのような主張がよく行われます。つまり「不倫をする以前から,夫婦間の婚姻関係は終わっていた。」というものです。
  この主張により,裁判は一転して泥沼化します。裁判では,長年の夫婦生活で,こんなことがあったから関係は終わっていた,あんなことがあったから関係は終わっていない等のやりとりが繰り広げられることになります。
  不倫の証拠を確実に掴んだからといって,100%安心することはできません。不倫した方から,以前より婚姻関係は破綻していたと主張されることが多いからです。
  他方,不倫以前から婚姻関係が既に破綻していた等という主張は簡単には認められないように思います。破綻していたのなら,なぜ離婚していないのでしょう。法は「合意」離婚という簡易な方法を認めています。この破綻の主張が裁判上で簡単に認められると考えると,大きな誤りとなります。


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 つらい話も多くありますが,有意義な意見がたくさんあり,勉強になります。

posted by benuchida at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 離婚まめ知識
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